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VTuber業界の二大巨頭 ― カバーとANYCOLORの戦略比較と展望

  • 執筆者の写真: 推しマークMemo
    推しマークMemo
  • 7月1日
  • 読了時間: 3分
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決算が示す成長と対照性

 2025年現在、VTuber業界を牽引するのはカバー株式会社(ホロライブ運営)とANYCOLOR株式会社(にじさんじ運営)の二社である。両社ともに売上高は400億円台に到達し、業界はすでにサブカルチャーの域を超えた成長産業となった。


  • カバー(2025年3月期):売上高434億円(前年比+43.9%)、営業利益80億円、営業利益率18.4%

  • ANYCOLOR(2025年4月期):売上高429億円(前年比+34.0%)、営業利益163億円、営業利益率38.0%


 数値から見えるのは、カバーが高い成長率を示しつつも利益率で劣後し、ANYCOLORが安定的かつ効率的な収益モデルを確立しているという対照的な構図である。


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カバー株式会社 ― 攻めの投資とブランド戦略

 カバーは少数精鋭のタレント運営を特徴とし、1タレント当たりの売上高は約2.7億円と業界内で突出する。イベントや物販の規模感を武器に、ファン1人あたりのLTVを最大化するモデルを採用。


  • hololive 6th fes.(2025年3月):59名出演、幕張メッセ開催、リアル・配信を合わせ数万人動員

  • 新規事業:公式カードゲームのヒット、二次創作支援「holo indie」、メタバース「ホロアース」、音楽ゲーム「ホロライブ DREAMS(仮)」


 短期的には利益率を圧迫しているが、2030年に売上高1,000億円を目標に掲げるなど、中長期の成長を見据えた「攻めの投資型」戦略が特徴である。



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ANYCOLOR株式会社 ― 多様性と効率で築く高収益体質

 ANYCOLORは所属タレント数150名超の「多人数・多様性重視」戦略を取る。幅広いジャンルのタレントを擁することで、裾野の広いファン層を獲得。特に英語圏ユニット「Luxiem」が中国・北米で成功し、海外展開を加速させた。


  • NIJISANJI EN:2023年4月期売上 前年比+468%の急成長

  • 収益構造:デジタル商品(ボイス・受注生産型グッズ)が中心で、在庫リスクが低く利益率が高い

  • 営業利益率38%は、エンターテインメント企業としても異例の高さ


 ANYCOLORは2030年を見据えて「安定成長と収益性の両立」を志向し、投資家からの評価も高い。


市場規模と展望

 矢野経済研究所によれば、国内VTuber市場は2022年度に約520億円、2023年度に約800億円規模へと拡大。これは同人誌市場や国内TCG市場に匹敵する水準であり、2025年度には1,260億円、2030年にはグローバルで1兆円規模に達すると予測される。

両社はアプローチこそ異なるが、いずれもVTuber市場の中核を担い、産業全体の成長を押し上げている。


結論:文化的現象から経済的インパクトへ

 カバーは「攻めの投資」によってVTuberを総合エンタメ企業の柱へ育てようとし、ANYCOLORは「効率と多様性」によって高収益を実現する。対照的な戦略を取りつつも、両社が業界の双璧として切磋琢磨する構図は、VTuber産業をさらに押し上げるだろう。


 かつて「一部のネット文化」と見なされていたVTuberは、今や同人誌・TCG市場と並ぶ産業規模を持ち、観光大使や公共イベントに登場する社会的認知を獲得した。食わず嫌いをしてきた層にとっても、もはや無視できない文化的・経済的現象へと成長している。


出典
  • カバー株式会社 決算短信・説明会資料(2025年3月期)

  • ANYCOLOR株式会社 決算短信・説明会資料(2025年4月期)

  • 矢野経済研究所「国内VTuber市場規模に関する調査」(2023年度版)

  • PANORA「hololive 6th fes. Color Rise Harmony」開催レポート(2025年3月)

  • 東京都広報「東京観光大使にさくらみこ氏ら任命」(2023年2月)

  • PR TIMES / 各種報道(NIJISANJI EN、Luxiem関連)

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