兎田ぺこら ― 継続と笑いで作り上げた「努力の物語」
2025年10月9日
筆者はデビュー当初から彼女を見続けてきた野うさぎである。
あの特徴的な笑い声に初めて出会ったのは、まだホロライブという名前が今ほど知られていなかった頃。
そして今、彼女は世界で最も見られる女性配信者の一人になった。
本稿では、ファンとしての感情と、VTuber文化の記録としての視点を重ね、「兎田ぺこら」という存在を改めて振り返ってみたい。
📅 主な活動年表(2019〜2025)
2019年
・7月17日:YouTube初生放送
・12月28日:チャンネル登録者数10万人突破
2020年
・4月4日:「ディスコミュ星人」歌ってみた公開(初のソロ歌枠)
・7月17日:明利酒類とのコラボ発表
・10月10日:日清カレーメシ×ホロライブコラボユニット「スパイスラブ」参加
・11月19日:初オリジナル曲「ぺこみこ大戦争!!」リリース
・12月4日:チャンネル登録者数100万人突破
2021年
・4月7日:YouTube公式CM出演
・11月13日:「FINAL FANTASY XIV」公式CM出演
2022年
・5月:声帯結節による休養を発表
・6月:復帰配信
・8月5日:登録者数200万人突破
2023年
・1月2日:オリジナル曲「全人類兎化計画!」リリース
・4月10日:女性配信者世界視聴時間ランキング1位
・12月6日:1stソロライブ「うさぎ the MEGAMI!!」開催
2024年
・1月4日:世界女性配信者ランキング2023にて1位達成(2年連続)
・4月26日:チャンネル登録者数250万人突破
・7月5日:ロサンゼルス・ドジャース「hololive night」出演
2025年
・1月8日:世界女性配信者ランキング2024でも2年連続1位
・3月21日:PlayStation × YOASOBI「PLAYERS」CM出演
第1章 序章:笑いと努力で築いた継続の美学
今では世界的な人気を誇るVTuberとなった兎 田ぺこら。
だが、彼女の成功は派手な企画ではなく、ひとつひとつの積み重ねによって築かれたもの。
「好きなことに忠実で、やりたいことにはすぐに手を出す」。
その素直さが彼女をここまで押し上げてきました。ただし、彼女は『(自称)極度の引きこもり気質』であり、リアルで人に会うような活動にはあまり興味を示さない。
(少なくとも23年頃までは積極的にコラボすらしていなかった……いやしていたが、そのあたりの話は今回は差し控えます)
その代わり、自分の“好き”を画面の中で完璧に表現する。
このスタイルこそが、兎田ぺこらという存在を形作っています。
第2章 笑いの多層構造 ― 感情の“音”で語る人
兎田ぺこらを象徴するのは、やはりあの笑い声。
ファンなら誰もが知っているが、ぺこらの笑い声には段階がある。
「ぺーこぺこぺこっ」と笑う演者としての笑い。
配信のテンポを整え、場を明るくする“サービス精神”の表れです(調子に乗っている時ともいう)
「ふぁっふぁっふぁ(HA↑HA↓HA↑HA↓)」と笑っているときは、本気で笑っている証拠。
このときのぺこらは、完全に素でゲームの展開やコメントがツボに入ったときにだけ出る“ガチ笑い”で、海外のファンにも度々ネタに
そして、褒められて照れてい るときの「えへっえへっえへっ」という笑いに、ツボにハマったときの“引き笑い”――。
ファンなら、どの音でどんな感情か、すぐにわかる。
笑いとは、彼女にとって感情を伝えるための音楽のようなものだ。
この多層的な笑いの表現力が、ぺこらを“感情で話すタレント”にしている。
第3章 好きなものに一直線 ― 興味と行動のスピード感
兎田ぺこらの行動の特徴は、興味を持ったものへの反応がとにかく速いことでしょう。
新しいゲーム、話題のアニメ、流行の言葉――少しでも気になればすぐに触ってみる。 うまくいかなくても「まぁ失敗したぺこ〜!」と笑って終わる。 この“即行動・即笑い”のスタイルが、彼女のエンタメ性を高めている。
その一方で、リアルイベントや外部交流には慎重。慎重すぎる。
外の世界に出るより、家の中で完結する創作に熱中する。
しかしそのバランス感覚が彼女の彼女としての活動を長続きさせていると思う。
「無理をしない」「好きなことで力を使う」――。
ぺこらはその切り分けを非常に上手にやっている。
だからこそ、配信の画面の中では常にエネルギッシュで、見ている側も“ぺこちゃん今日も元気だな”と安心できるのです。
第4章 継続という名の信仰
兎田ぺこらを語る上で外せないのは「継続力」でしょう。
デビューから今日まで、ほぼ毎日何らかの形で配信を行ってきました。
長期休養に入ったのは2022年の声帯結節による一時的な休みくらいで、それ以外は常に走り続けている。
彼女にとって「続けること」は義務ではなく、日常もしくは信仰のようなものでしょう。
配信ボタンを押すことが、呼吸と同じレベルにある。
だから、喉を痛めて休むことになったとき、彼女の中ではそれが“異常事態”だった。
休養明け、彼女が最初に発した言葉は「こんぺこー!」。
その一言に、野うさぎ(わたし)は涙した。
彼女が戻ってきた、また笑ってくれた――。
その瞬間、ぺこら自身も、そしてファンも“日常が戻った”と感じたと思います。
彼女には「自分が楽しめば、みんなも楽しい」という一貫したテーマを持っています。
それを信じて、ただ真っ直ぐに続けてきて、その積み重ねが、結果として世界中のファンの信頼へとつながったと思います。
第5章 信頼とプロレス ― コメントとの関係性
兎田ぺこらの配信は、コメント欄との“掛け合い”が生きている。これなくしては彼女の配信は語れない。彼女と視聴者のやり取りは、まるで漫才のようです。ファンが茶化すようなコメントをすると、 「おい誰ぺこ! いま言ったやつ出てこいぺこ!」と即座に反応する。
それは怒っているのではない。
ツッコミのようでいて、ちゃんと“笑い”に変えている。
この喧々諤々(けんけんがくがく)としたやり取りこそ、ぺこら配信の醍醐味だ。
彼女はこういったコメントを拾うタイミングが異常に早い。
必要な言葉を即座に拾い、そこから話を広げ、次の展開を作り出す。
これは単なるトーク力ではなく、「観察力」と「即興力」の高さを示している。
コメント欄を敵ではなく、舞台の一部として扱う。
その絶妙な“間合い”があるからこそ、野うさぎたちは安心して彼女と“プロレス”できるのだ。
この関係は単なる人気者とファンではなく、長年積み上げてきた信頼関係 の証明なのです。
第6章 ファンと共に作る「ぺこら空間」
ぺこらの配信は、彼女一人の舞台ではない。
コメント、リアクション、ミーム、ネタ、全てがファンとの共同作品となっています。
たとえば耐久配信では、チャット欄のコメントが滝のように流れる。
「がんばれ!」「もう少しぺこ!」といった声が、彼女を動かす燃料になる。
そしてぺこらは、そのコメントを拾って「おまえら、見とけよぺこ!」と返す。
この相互作用こそ、ぺこら配信の本質だ。
また、ファン側も空気を読む。
ぺこらが集中しているときは静まり、成功した瞬間に爆発的に盛り上がる。
この“コメントの呼吸”が合っているのは、長い時間をかけて育まれた信頼の賜物だ。
兎田ぺこらは決してファンに媚びない。
だが、ファンを信頼している。
その距離感の中で、お互いが笑い合える空間――
それが「兎田ぺこらの配信」である。
第7章 世界が認めた“笑う努力家”
2023年、兎田ぺこらは世界女性配信者ランキングで第1位を獲得した。
それは日本国内だけでなく、英語圏やアジア圏にもファンを持つことを示す結果だった。
翌年も1位を維持し、2年連続で「最も視聴された女性VTuber」として名前を刻む。
この快挙の裏には、長年の積み重ねがある。
ぺこらは初めから世界を狙っていたわけではない(我々が知らないだけで狙っていた可能性も十分ありえますが)
ただ、自分の好きなことを楽しみ、毎日配信を続けただけだった。
それでも世界が彼女を見つけた。見つけてしまった。
なぜなら、笑いには言語の壁がないからです。
彼女の「ぺこ」「はあ!?」「もうやだぺ こ!」といった口調は翻訳を必要としない。
感情そのものが音として伝わる。
だから、英語字幕がなくても笑える。
それが“兎田ぺこら”というブランドを国際的に押し上げた。
海外のSNSでは「PEKO」や「HA↑HA↓HA↑HA↓」もひとつのミーム(ネット文化)になっている。 その広がり方は自然発生的で、企業が作ろうとしても再現できない。
ぺこらの笑いは、まさに“自然現象”のように世界に広がったのです。
第8章 メディアとリアルへの進出
ぺこらの活躍は、バーチャルの枠を越えてリアルのメディアにも広がっている。
2023年には1stソロライブ「うさぎ the MEGAMI!!」を開催。
スクリーンの向こうにいた存在が、まるで現実に立っているかのように感じられた。
ステージ上での「ここまで来られたのはみんなのおかげ」という一言に、 多くのファンが涙した。
企業コラボやCM出演、テレビ番組ナレーションなど活動の場は拡大した。
日清、不二家、PlayStation、YOASOBI、ドジャース――
いずれも“人気者だから”ではなく、“信頼できるから”彼女は起用されている。
彼女はリアルイベントに積極的に出るタイプではない。
それでも、現実の企業やメディアが彼女に歩み寄る。
バーチャルであり ながら現実に影響を与える存在。
その姿は、VTuber文化のひとつの完成形とも言える。
ぺこらが立つ舞台は、もはや配信だけではない。
彼女自身の世界観や努力・笑い・素直さが、多くの人にとっての“物語”になっている。
第9章 終章:笑いながら努力することの美しさ
ぺこらの活動を見ていると、いつも思う。
この人は、笑うために努力しているのではない。
努力そのものを楽しんでいるのだ。むしろそれを努力とも思っていないのかもしれない。
失敗を恐れず、むしろ笑いに変える。
トラブルや事故さえ、エンタメにしてしまう。
それは天性の明るさというより、「落ち込む暇があるなら、次の瞬間を面白くしたい」という強い意志の表れだと思います。
そして、その笑いにファンは救われる。
彼女が笑ってくれるだけで、自分も前を向ける。
野うさぎたちにとって、ぺこらの配信は娯楽であると同時に、日々の支えでもある。
兎田ぺこらは、バーチャルでありながら、現実の人々に“努力する勇気”を与える存在になった。
彼女が今日も「こんぺこー!」と笑うたびに、世界のどこかでまた誰かが元気を取り戻す。
笑いながら努力すること。
それを美しいと言える時代を作ったのが、まさに兎田ぺこらというタレントなのです。
ホロライブ公式サイト「所属タレント一覧」
https://hololive.hololivepro.com/talents
ホロライブ公式ニュース「兎田ぺこら活動情報」
https://hololive.hololivepro.com/news/
YouTube 兎田ぺこら公式チャンネル(動画・配信履歴)
https://www.youtube.com/@usadapekora
非公式wiki「ホロライブ非公式wiki/兎田ぺこら」
https://seesaawiki.jp/hololivetv/d/%CD%FD%93c%A4%DA%A4%B3%A4%E9
KAI-YOU.net「VTuber・兎田ぺこら、世界女性配信者ランキング1位に」
https://kai-you.net/article/88809
PANORA「世界女性VTuber配信ランキング2023、兎田ぺこらが2年連続1位」
https://panora.tokyo/archives/79543
ファミ通.com「ホロライブ3期生・兎田ぺこら 1stライブ『うさぎ the MEGAMI!!』レポート」
https://www.famitsu.com/news/202312/06645475.html
Real Sound「VTuber・兎田ぺこら、努力と笑いで築く“信頼”の形」
https://realsound.jp/tech/2023/12/post-1486658.html
日清食品「カレーメシ×ホロライブ」特設ページ
https://www.cupnoodle.jp/currymeshi/hololive/
明利酒類コラボ特設サイト「兎田ぺこら×明利酒類」
https://www.meirishurui.com/special/hololive_pekora/
不二家公式コラボページ「ペコちゃん×兎田ぺこら」
https://www.fujiya-peko.co.jp/campaign/hololive-pekora/
PlayStation × YOASOBI 「PLAYERS」公式CM特設ページ
https://www.playstation.com/ja-jp/local-campaigns/players/
NHK-FM「ぶいあーる!〜VTuberの音楽Radio〜」出演アーカイブ
https://www.nhk.or.jp/radio/ondemand/detail.html?p=9483_01
日本テレビ「誰も知らない明石家さんま」出演情報(番組公式ページ)
https://www.ntv.co.jp/sanma/
ももいろ歌合戦 公式サイト「第8回 ももいろ歌合戦 ~愛の大晦日~」出演者一覧
https://www.momoclo.net/momoiro-utagassen_2024/
4Gamer.net「VTuber兎田ぺこら,ドジャース×ホロライブ『hololive night』に登場」
https://www.4gamer.net/games/999/G999901/20240705060/
Anime News Network “Hololive’s Usada Pekora Tops Global Female Streamer Rankings 2 Years in a Row”
https://www.animenewsnetwork.com/interest/2025-01-10/hololive-usada-pekora-tops-global-female-streamer-rankings-2-years-in-a-row/.208978





